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ダゲレオタイプの女 [映画]

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 少し前ですが、黒沢清監督の初のフランス映画『ダゲレオタイプの女』を見ました。

 世界最古の写真術ダゲレオタイプ(銀板写真)に取り憑かれた写真家 そのモデルとして古い館に囚われ生きる娘マリー そしてマリーを愛する助手の青年ジャンの物語 

 マリーの儚い美しさ 不安に揺れるまなざし 古典的な青いドレスをまとった立ち姿 まさに銀板写真のごとく唯一無二の存在として心に焼き付けられました。 マリーを演じたコンスタンス・ルソーは、日本公開の映画は一作のみという日本ではなじみの薄い女優さんですが、フランス本国では映画、ドラマなど多数出ている実力派だそうです。 これからの活躍が大いに期待されますね。

 物語は日本の牡丹灯篭を思わせるゴシックロマンス。 それでいながら、フランスのモダンな犯罪ミステリーが違和感なく共存するという不思議な映画でした。 そして、ホラーの黒沢監督ですから、 古い屋敷の内部、温室等々、ただならぬ雰囲気にはぞっとしました。 いわゆるスクリーミングなものではなく、じわじわくる静かな恐怖 というところがとても引き込まれました。 ラストシーン、マリーをうしなった青年ジャンの哀しみは切なく胸を打ちました。 こういう哀しいホラーって好きなんですよ、『アザース』とか『ヴィレッジ』とか。

 その後少し黒澤監督祭となり、『クリーピー』を見ましたが、心理劇として背筋が寒くなるものの、全体的にグロい描写が多くてあまり好みには合いませんでした。 香川照之が思いのままに人の心理を繰るモンスター的犯人の役で出ていて、彼の演技は素晴らしかったのですが・・・

 ダゲレオタイプ(銀板写真)についても関心が高まってきたので、関連の本を色々読んでみました。


写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ

写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ

  • 作者: 安友 志乃
  • 出版社/メーカー: 雷鳥社
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本


 初期の写真技法について、図版やイラストをまじえて物語風に描いているとても読みやすいガイドブックです。 当時の一般人の写真についての感じ方、ファッションや文化についても知ることが出来ます。 ダゲレオタイプの貴重な写真図版も多数見られるのは嬉しいですが、惜しむらくは図版が小さめな点でしょうか。 


ダゲレオタイピスト―銀板写真師

ダゲレオタイピスト―銀板写真師

  • 作者: 鳩山 郁子
  • 出版社/メーカー: 青林工藝舎
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: コミック



 『ゆきしろ紅薔薇』等、以前から注目していた鳩山郁子さんのコミックです。 湖でおぼれて亡くなった幼い少年の兄とダゲレオタイピスト=銀板写真師の愛と幻想の物語です。 少年の魂を定着させた銀板写真が150年の眠りから蘇るくだりは思わず肌が粟立つほど印象的でした。 銀板写真の現像法など技法的な描写も詳しくて、物語としても深くお勧めです。

 今度機会があったら、実物の銀板写真も是非見てみたいです。

 読んでくださりありがとうございます。

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sana

ダゲレオタイプって銀板写真のことなんですか!
知りませんでした。きれいな響きですね。
はかなげな雰囲気のヒロイン‥でも、どこかりんとしていますね。
雰囲気のある素敵な絵を拝見できて嬉しいです。
こんな素敵な女優さんもいると知りませんでした。
怖いのは苦手ですけど~ゴシックロマンスなら、かなり好きかも。
クリスチアナ・ブランドの「領主館の花嫁たち」など、面白かったです。お読みになってませんか?
こちらは「小さなアトリエ・4」になったので、アイコンが新しくなりました。
色々あって今も風邪引いていたり、ばたばたしております。
寒さが厳しくなってまいりましたね。
お身体大丈夫でしょうか。
「日々悠遊」のほうに遅ればせなコメントもしてありますので、ご覧くださいませ^^
by sana (2016-11-30 19:22) 

tatchan

*sanaさん*
随分前にコメントを頂いていたのに
年末年始落ち着かなくて、そしてこちらに帰ってきてからも体調不良で
返事をお返しするのがこんなにも遅れてしまって
本当に申し訳ありませんでしたm(_ _)m

「ダゲレオタイプ」聞きなれない題名なので私も最初何かと思いましたよ。
今はすっと出てきますが、題名を覚えるのもちょっと難しかったかなと思います。
ヒロインの女優さんは本当儚げでいながら芯はしっかりしていて
独特の空気感があって、彼女を見るだけでもこの映画は
価値があるかと思いました。

私も心霊ものなどはどちらかというと苦手な口で
和製のホラーはほとんど見ません。
でもゴシックロマンスは雰囲気で見れるのでむしろ大好きです!
>「領主館の花嫁たち」知らない題名ですが、今度検索してみますね。
私は今現在、シャーリイ・ジャクスンの『丘の屋敷』を読んでいます。
これはゴシックまで遡りませんが、いまや古典的幽霊屋敷ものと言えますね。
そのせいか、一年前に公開された『クリムゾン・ピーク』にも再び関心が
高まっています。 また見返してあわよくば記事にできればと考えています。

「小さなアトリエ」もう4なんですね☆
おめでとうございます!
熱心に更新していらっしゃるから、私も爪の垢でもせんじて飲みたいです。
人形ブログのほうもすっかりご無沙汰してしまって
先ほど見に行きましたら、本当にご丁寧にコメントいただき
ありがとうございますm(_ _)m
レスはもう少しお待たせしますが、どうかお許しくださいね。

本当にいろいろお気遣いいただきありがとうございました!
by tatchan (2017-01-13 17:35) 

tatchan

*ありささん*
ご訪問、そしてナイスもありがとうございます!
by tatchan (2017-01-13 17:59) 

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