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女王陛下のお気に入り [映画]

またしても、ご無沙汰していました。

 母の死から一年たたないうちに、義父がこの6月、同じ心不全と脳出血で亡くなりました。亡くなる数週間前何度も危篤状態を繰り返し、片道2時間かかる相模大野~吉祥寺を行ったり来たり。夫など日に二回も往復ということもありました。 その間、亡くなった母の形見の小説の出版の締め切りが重なる、というハードな状態が続きました。

 以後、義父の葬儀と四十九日、母の一周忌と続き、、今はようやく母の出版―これも何度か印刷に問題があったり乱丁があったりで大変でしたが―の出来上がりを待つのみになりました。

 そして、現在は猛暑! 今までの無理がたたってか、体に疲れが一気に出ています。

 それでも、久しぶり(約3ヶ月ぶり)に見た映画がとても面白かったので、感想を書きます。 しばしお付き合いいただけると嬉しいです。

「女王陛下のお気に入り」

 18世紀初頭のイギリスが舞台の歴史劇ですが、歴史がテーマというより、どちらかというと、ヒロイン三人の息もつかせぬバトルを描いています。 

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 お気に入りのひとり、アビゲイルは容姿は花のように可憐でありながら、中身はしたたかな小悪魔ちゃん。

 没落貴族の娘ということで辛酸を味わいつくしているから、のしあがってやるという上昇志向、野心が半端じゃないです。知恵をめぐらせて女王に取り入る必死さや、貴族の男を手玉にとる様は、ある意味スカッと痛快でした。

 演じるのはエマ・ストーン、スパイダーマンの彼女ですね。男好きのする金髪j碧眼、ピンクの肌で、脱ぎっぷりもよく色気たっぷりで、とても目の保養になりました☆


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 そして、元々のアン女王の第一のお気に入りといえば公爵夫人のサラです。演じるのは、こちらも有名どころのレイチェル・ワイズ、端正な容姿で気品に満ちていて美しい女性です。

 女王をあやつる権力志向だけの人かと思えば、後半は女王に真の愛情を吐露して、こう来たか!と完全にやられました! 悲劇的な最後は気の毒でしたが、陰謀で負った顔の傷やアイパッチもカッコよく、騎士のような凛々しさがあるハンサムウーマンでした。

女王陛下のお気に入り_アン女王3.jpg

 アン女王は、高貴な身分でありながら17人の子供を次々に失うという悲劇にみまわれて、不安に満ちた幼い少女のように愛情に飢えた女性でした。

 女王様って、本当、一国をしょっているという責任が重くて、優雅さよりストレスがすごいから、絶対生まれたくないって思います。 死んだ子供のかわりに兎を一杯飼っていましたが、物悲しいですね。 彼女自身が、かごの中のとらわれ人も見えました。ときに滑稽にもみえる悲劇的な人生を、笑いと共感をもって見つめてしまいました。

 この役でアカデミー賞を獲得したオリビア・コールマン、どこかで見たと思ったら、イギリスの海外ドラマ「ブロード・チャーチ 殺意の街」 のヒロイン、女刑事役でした。美人じゃないけど、いい味を出していました。しかし、あのドラマも真相は衝撃的でしたね。

 監督さん、「聖なる鹿殺し」の方なんですね。凹レンズで見たように湾曲した異様な撮影法(のぞき見感覚狙い?)や、白と黒のモノクロで決めた渋いファッション、当時の貴族社会を皮肉とブラックユーモアで描いていて、とにかく新しいことが好きな異才の人という気がしました。

 ストーリーの面白さだけでなく、画面も斬新でコスチュームも個性的で美しく、いろいろな意味で見る価値たっぷりなぜいたくな映画でした。


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最近の映画メモ [映画]

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「アイズ・ワイド・シャット」

 今更って感じですが、ムービープラスでキューブリックのドキュメンタリーを見て興味がわいたので見てみました。 キューブリックが元カメラマンというのは初めて知りました。

 とにかく、画面が美しいですね。 アングルとか画面の切り取り方とか、監督がカメラマン出身というところは十分納得できました。 勿論登場人物も美しく、特に、若き日のニコール・キッドマンの若々しい美しさを堪能しました。

 冒頭の黒レースのドレス姿や美しいヌード、形のいい胸もとや真っ白な背中には目を奪われっぱなしでした。
 
William_EyesWideShut2.jpg

 全然タイプの役者ではないのですが、トム・クルーズもよかったですよ。

 美しい若妻のあらぬ告白に動揺したり、色々な女性にユーワクされたり、でも結局なにも出来ない・・・もう情けなさ満開!可愛げがあるというか、完全に「受け」の魅力ですね(笑)

 けだるげな夜のマンハッタンの街とか、あやしげな仮装パーティとか、どんどん引き込まれて、やはり映像センスがあるからでしょうか、飽きることなく楽しめました。 とにかくキューブリックの遺作ってこんなだったんだ~という目の覚めるような驚きがあって、とても面白かったですよ☆

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「チューリップ・フィーバー」

 こちらはこちらで、オランダにこんな歴史が・・・!という驚きがある映画でした。チューリップに投資って、いつの時代もどんなものが流行るかわかりませんね。 しかも挿し色がはいったチューリップが希少種で人気があるって、全く知りませんでした。 春になりあちこちで咲くチューリップに目がいくようになりましたが、確かに二色のものはあまり見かけませんね。

 修道院育ちの孤児の少女が玉の輿に乗って金持ちの商人の嫁さんに、でも夫とそりがあわずに画家と浮気、という話でしたが、もっと重苦しい話かと思っていたら、結構滑稽味があって半分笑いながら見れるような話です。 言うならば、「ボッカチオ」とか「カンタベリーテールズ」のようなティストでしょうか。

 ヒロインを演じた、「エクスマキナ」の美貌が記憶に新しいアリシア・ヴィキャンデルは登場シーンでは、貧しい中に光る美しさを見せていましたが、17世紀オランダの美女というには、少しやせすぎで無理がありました。 ダブルヒロインのかたわれ、女中役のホリディ・グレンジャー(ボルジアのドラマのルクレチア役の人です)のほうがぽっちゃりとして肌もピンク色なところとか、当時の美女のイメージにあっていたような気がします。 まあ、そこは最後のオチに生かされてくるわけですが(ちょっとネタバレすみません)・・・

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「二重螺旋の恋人」

 「8人の女たち」フランソワーズ・オゾン監督の恋愛サスペンス。 母に愛されたことがないというトラウマで精神を病む女性を描いていますが、こちらは物語の構成が複雑でひねりがきいています。

 双子のようにそっくりの恋人二人に翻弄される話、というとクローネンバーグ「戦慄の絆」を思い出しますが、こちらのほうは、実は・・・という、あっと驚くオチは、まるで萩尾望都の名作漫画を思い出しました。

 萩尾さんがもう10年若くて、コミカライズしたくれたら、・・・と妄想してしまうほど、一筋縄でないかない奥深いテーマがあり、人間ドラマとしても最後は深く感動できました。 お勧めの映画です☆ 


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ダゲレオタイプの女 [映画]

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 少し前ですが、黒沢清監督の初のフランス映画『ダゲレオタイプの女』を見ました。

 世界最古の写真術ダゲレオタイプ(銀板写真)に取り憑かれた写真家 そのモデルとして古い館に囚われ生きる娘マリー そしてマリーを愛する助手の青年ジャンの物語 

 マリーの儚い美しさ 不安に揺れるまなざし 古典的な青いドレスをまとった立ち姿 まさに銀板写真のごとく唯一無二の存在として心に焼き付けられました。 マリーを演じたコンスタンス・ルソーは、日本公開の映画は一作のみという日本ではなじみの薄い女優さんですが、フランス本国では映画、ドラマなど多数出ている実力派だそうです。 これからの活躍が大いに期待されますね。

 物語は日本の牡丹灯篭を思わせるゴシックロマンス。 それでいながら、フランスのモダンな犯罪ミステリーが違和感なく共存するという不思議な映画でした。 そして、ホラーの黒沢監督ですから、 古い屋敷の内部、温室等々、ただならぬ雰囲気にはぞっとしました。 いわゆるスクリーミングなものではなく、じわじわくる静かな恐怖 というところがとても引き込まれました。 ラストシーン、マリーをうしなった青年ジャンの哀しみは切なく胸を打ちました。 こういう哀しいホラーって好きなんですよ、『アザース』とか『ヴィレッジ』とか。

 その後少し黒澤監督祭となり、『クリーピー』を見ましたが、心理劇として背筋が寒くなるものの、全体的にグロい描写が多くてあまり好みには合いませんでした。 香川照之が思いのままに人の心理を繰るモンスター的犯人の役で出ていて、彼の演技は素晴らしかったのですが・・・

 ダゲレオタイプ(銀板写真)についても関心が高まってきたので、関連の本を色々読んでみました。


写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ

写真のはじまり物語―ダゲレオ・アンブロ・ティンタイプ

  • 作者: 安友 志乃
  • 出版社/メーカー: 雷鳥社
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本


 初期の写真技法について、図版やイラストをまじえて物語風に描いているとても読みやすいガイドブックです。 当時の一般人の写真についての感じ方、ファッションや文化についても知ることが出来ます。 ダゲレオタイプの貴重な写真図版も多数見られるのは嬉しいですが、惜しむらくは図版が小さめな点でしょうか。 


ダゲレオタイピスト―銀板写真師

ダゲレオタイピスト―銀板写真師

  • 作者: 鳩山 郁子
  • 出版社/メーカー: 青林工藝舎
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: コミック



 『ゆきしろ紅薔薇』等、以前から注目していた鳩山郁子さんのコミックです。 湖でおぼれて亡くなった幼い少年の兄とダゲレオタイピスト=銀板写真師の愛と幻想の物語です。 少年の魂を定着させた銀板写真が150年の眠りから蘇るくだりは思わず肌が粟立つほど印象的でした。 銀板写真の現像法など技法的な描写も詳しくて、物語としても深くお勧めです。

 今度機会があったら、実物の銀板写真も是非見てみたいです。

 読んでくださりありがとうございます。

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イノセントガーデン [映画]

 このところの湿気と暑さにすっかりやられて、またしても間が開いてしまいました><

 そんなわけで、『イノセントガーデン』、実は既に2週間以上前、監督(パク・チャヌク)、主演女優(ミア・ワシコウスカ)と、どちらもかなりお気に入りで、公開されてすぐ見てきたのですが、ことのほか絵を描くのが手間取ってしまったため、ちょっと遅れての感想です。

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 とあるアメリカの田舎町、丘の上に立つ深い森のような広大な邸宅が舞台のミステリー。 18歳の誕生日を迎えたインディアは、最愛の父を不慮の事故で失うが、 葬儀の日、父の面影を宿す叔父のチャールズの出現によって、彼女の内側に今までにない変化の兆しがあらわれる。 折りしも彼女の周囲の人々が次々と行方不明になる不可思議な事件が起きていた・・・

 恐ろしいのだけどエレガント、残酷だけど官能的で美しい映画でした! 

 靴、鍵、蜘蛛、卵、鳥の剥製、グランドピアノ・・・さまざまな隠喩的小物がちりばめられているところがまた不思議な寓話のようで、ちょうど『アリス・イン・ワンダーランド』ミア・ワシコウスカが主役というのもあって、閉じられた世界の中の彼女が「黒いアリス」のように見えました。 今まで明るい髪色しか見たことのなかった彼女の黒髪はそれだけですごく新鮮で美しかったです! 
 
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 母親役には二コール・キッドマンというゴージャスさ☆ この冒頭の『ある貴婦人の肖像』を思わせる喪服姿の美しかったこと!

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 そして何より、怪しげで妖しげな叔父チャールズを演じたマシュー・グードが一番の掘り出し物でした! ほとんど人間とは思えない異様な存在感が凄くて、一瞬たりとも目が離せない。 エレガントで獰猛で美しい野獣のような危険な男・・・これは、インディアならずとも惹かれてしまいますよね~

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 パク・チャヌク監督の映画ですから、当然いろいろなエロポイントがあって、あのシャワーシーンとか首絞めシーンとか・・・小さな蜘蛛がインディアの体を這い回るシーンまでも、おお!と興奮(笑)  しかし、やはりこの叔父姪の連弾シーンが一番の萌えましたね~! 叔父と姪の関係でこれは・・・禁断過ぎるでしょう~><

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 また、あまり仲がよろしくない母娘(おやこ)と言っても、インディアが母親の髪を梳かすシーンは美しく、なかなか目の保養でした♪  

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 しかし、やっぱり自分の理解を超えた存在である娘に、普通に愛情をもつのは難しいようで、「あの子がたうち苦しむ姿をみてみたい」とまで言わせてしまう哀しさ。 「母」であるより「女」である彼女は、ちょっと残酷童話の継母のようでした。 

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 とにかく、繊細で鋭敏な感覚をもてあまして、いつも眉間にシワを寄せて内にこもりがちなインディアでしたが、それが巣立つ前の少女たるゆえんだったのかと思います。 その彼女が最後には悠然と翼を広げて大空を羽ばたくように見事に大人となった姿には、しびれるような官能と感動を同時に味わいました。 

 ファーストシーン、そしてラストシーンの草原にたたずみスカートの裾をなびかせて微笑む少女の、何て美しくカッコよかったこと>< (ココのアングルも最高です!)


 この映画、仲のいい叔父が殺人犯?というところが、ヒッチコックの『疑惑の影』がベースになっているそうです。 残念ながら私は見たことがなくて、代わりに原題の『STOKER(ストーカー)』と言うところからも、この映画は一種の吸血鬼譚、もしくは人狼伝説のように見えました。 そんなゴシックの香りがするところも、ツボにハマった素敵な映画だったと思います。

 他にも、『羊たちの沈黙』のレクター教授とクラリス(彼女も黒髪でしたね)の関係を思い出したり、幼い頃から姪っ子に目をつけて自分のパートナーにというところが『源氏物語』を思い出したり・・・いや~本当いろいろと連想できて楽しかったです♪

 そう、ヒッチコックと言えば、パク・チャヌク監督は『めまい』がきっかけで映画監督になる決心をしたとのこと。 うわ~私もヒッチコックでは『めまい』が一番という人だったので、いっそう親近感が沸いてきました。 元々大好きだった『オールドボーイ』を始めとする復讐三部作だけでなく、他にも色々見てみたくなりました☆


渇き [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: DVD



 というわけで、早速見たパク監督の吸血鬼もの~♪

 エミール・ゾラの『テレーズ・ラカン』に触発されて作ったそうです。 敬虔な青年神父が人体実験の結果吸血鬼になってしまい、美しい人妻と不倫の恋をするというお話。 シリアスな恋愛物ですが、スプラッタでグロテスクでコミカルな部分もあり、とても監督らしい刺激的な吸血鬼ものに仕上がっています。 ちなみに、この映画でも小物の靴が効いていて、哀しいラストを素敵に盛り上げていました。 監督のそんなロマンティックかつフェチぽいところ、大好きです~笑


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嵐が丘 [映画]

 また体調その他落ち着かなくて、久々の更新になってしまいました。

 実は、この4月から一念発起して横浜の絵の教室に再び通い始めたんですよ。 ところが、6年のブランクが大きかったのか、ずずーんと疲れが出てしまって、やら肋骨やら、余り普段痛まないところがダメージを受けて、再び整形外科のお世話になり湿布を貼ったり色々大変でした。 まあ、骨に異常がなかったのは不幸中の幸いでしたが、あの程度の事でこんなに落ち込むなんて、やっぱり年齢のせいもあるかもなぁなんて、本当、歳はとりたくないものとつくづく思いました^^;

 さて、少し前に見た映画『嵐が丘』ですが、これがなかなかよかったので折角なので記念に少し絵を描いて感想を添えてみました。

 1993年製作(?)この映画、存在は公開当時から知っていたのですが、ずっと見ていなかったのですよ。 キャサリンジュリエット・ビノシュというのは聞いていて、ビノシュのは結構好きな女優さんだったのですが、『嵐が丘』に何故フランス人?と当時はちょっと引いてしまったんですね。

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 原作を読んで興味がわいてきた今見てみると、ビノシュのキャサリンは自由奔放で我儘で、気が強いかと思うともろく繊細な面もあり、欠点だらけなのに人をひきつけずにはいられない生き生きとした魅力にあふれていて素敵でした。 ビノシュは笑うと少女のように可愛く親しみやすい感じがするのに、時に女神のような近寄りがたさも感じさせて、独特の魅力を持っているんですよね。 幽霊となってまでヒースクリフの心に生き続ける「永遠の女性」キャサリン役はまさにうってつけだったと思います。 前半のクライマックス「ヒースクリフは私なの」と言う彼女の身を切られるほど激しい愛の表現も切なくて胸が詰まりました。

 荒野でキャサリンとヒースクリフが身を寄せ合って一本の木と心を通わせる場面も霊的で、彼らがいかに魂の根源で結びついているかを感じさせて心が震えました。 ここは本当この映画の肝とも言えますが、キャサリンの神秘的な黒い目とヒースクリフのかなしいまでに澄んだ青い目が、嵐が丘の空と大地を思わせて、その美しさも心に残っています。

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 レイフ・ファインズヒースクリフは本当ビノシュに負けないほど存在感があって素晴らしかったです。 先日入手したパンフレットにはラルフ・ファインズと書かれていて、映画俳優としてはまだ駆け出しの頃だったのですね。 野生的な風貌にキラキラ輝く目が澄み切っていて、孤児として拾われてきた孤独とキャサリンにたいする愛の純粋さが痛いほど感じらました。 彼は、周りの人々に「悪魔」と呼ばれて蔑まれていましたが、異世界から来た魔王の落胤のように不可思議な存在だけど高貴な雰囲気も漂っているところも原作のイメージそのままだったと思います。  

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 物語の最後、復讐鬼のようだった彼も、キャサリンの墓を掘り起こして生前と変わらぬ姿を目にしてから、この世ならぬものに囚われるようになり、キャサリンの娘と義理の息子のヘアトンとの間に芽生えた愛も素直に受け入れるように変わっていきます。 キャサリンの霊に導かれて迎えた死も、傍目には悲惨に見えても、なんと静かで幸福そうだったことか・・・ラストも原作そのまま深い感動が味わえました。 

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 「馬鹿ね。私は必ずここに帰ってくるわ」

 物語半ばで、不安そうなヒースクリフにかけられたキャサリンのこの慰めの言葉を思い出すと、彼女はその言葉どおり、死んでしまった後も彼の元に帰ってきたんだと思うと切なさに胸が詰まります。

 
 
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 それにしても、二代にもわたる長い大河的な物語を、ややコンパクトではありますが、よく2時間弱に上手くまとめていたと思います。 視覚的にも、物語の象徴でもあるアーンショウ家の館もセットだそうですが、そうとは思えないほど堅固で雰囲気が出ているところも感心しました。 それに風景も荒々しく壮大かつ素朴で美しく、まるでヨークシャーの大地の息吹が聞こえてくるかのようでした。 『嵐が丘』は、まさにこの自然が生んだ物語なんですね。

 そしてもうひとつ、この映画の素晴らしいところは、何と言っても坂本龍一の音楽ですね。 笛の音を基調とした哀愁を帯びた音色は物語の雰囲気と見事にマッチしていました。 

 最後に隠された見所としては、冒頭と最後に登場する、この物語の語り部でもあるエミリー・ブロンテが、アイルランドの有名な歌手シンニード・オコナーが演じているところでしょう。 打ち捨てられ廃墟と化した館を真っ青なマントを羽織って訪ねるエミリーのたたずまいの美しさ、そして、その深い声の響きは本当『嵐が丘』の魂そのもののようでした。


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