SSブログ

『龍馬デザイン』 [映画、ドラマ関連本]

 龍馬伝が最終回間近のある意味切羽詰った時ですが、今このときでなければと思ったので、柄でもなく初のドラマ関連本について紹介しようと思います。 


龍馬デザイン。

龍馬デザイン。

  • 作者: 柘植 伊佐夫
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本



 龍馬伝の人物デザイン担当の柘植伊佐夫さんの二年近くにわたる龍馬伝の製作日記で、龍馬伝を見続けていてこの世界のビジュアルに少しでも惹かれた方でしたら、是非!とお勧めしたい本です。

 さて内容ですが・・・噂に聞いたときは、たぶん膨大なイラスト画像が載せられた内容を思い描いていたのですが、予想に反して実際には画像は冒頭の数ページのみでほとんどなく、膨大なテキストで埋められた深く充実した内容に驚き圧倒されました。

 龍馬伝の他のスタッフ、出演俳優との交流も描かれている製作の記録というだけでも読み応え満点なのですが、 それに加えて、筆者の内面―美術、芸術、歴史だけではなく、文化、哲学、宗教という精神の記録でもあり、そうした精神を保ちながら、二年という長丁場を情熱のこもった仕事をされてきたかと思うと、 龍馬伝の画面から血肉のある人間の熱情と生々しい生の臭いが感じられたのは道理だったと、本当に鳥肌が立つくらい感動しました。
 
 以下少しネタバレを含みますので、その点をご了承いただける方だけお読みください。

 まず、個人的に美味しい!と感じた部分としては、

 1.東洋様の髪は地毛をかなり生かした月代部分だけが鬘というヘアメイクだった(!)

 2.以蔵役の佐藤健さんの演技を随所で手放しで絶賛。 撮影秘話や愛情ある表現に思わず本編の以蔵を思い出してじ~んと浸ってしまうことしきり。

 3.高杉のカリスマ性も随所で絶賛。 クランクアップ時には深い伊勢谷高杉論を展開(これがまた名文なのですよ~)。

 と、東洋様、以蔵、高杉の3人のファンとしてはこれだけでも買ってよかった~><と至福の想いを味わいました(笑)

 柘植さんはもともとヘアメイクの専門家さんなだけあって、以蔵のカツラや高杉の髪についても入念に神経を配られたことについても詳しく書かれています。 あ~伊勢谷高杉の髪ってホント微妙だ~描くのがむつかしいよぉと思っていたのは無理もなかったんですね~(笑)

 実は、現在イラストに集中しているため時間がなく、未だかなりムラのある部分読みしかしていないのですが(すみません)、そんななか、第三部以降の長崎という舞台がいかに龍馬伝の世界において重要であったかについて書かれた部分が、とくに印象深く心に残りました。

 長崎という一種独特の異国と日本の入り混じった、そして殉教(キリシタン、原爆)というアイコンで彩られた土地・・・確かに、幕末の日本の状態を臨場感をもって表すにはこれ以上ない場所だったなぁと納得。 そこからは、遠い異国の地への憧れと、痛々しい犠牲の血の臭いが感じられ、そう言えば、高杉が初めて喀血したのが史実のように戦場ではなく長崎のグラバー邸だったというのも、この物語においては必然だったんだと思えたりしました。

 そして、筆者が日本、儒教文化というより西洋文化、キリスト教文化により深い関心を示しているところも、やっぱり!と思いました。

 だって、龍馬伝というドラマを見ていると、どこか西洋文化やキリスト教の香りをより強く感じていましたから。 そう、以蔵や武市先生が聖人に見えたり、生々しい愛憎表現や復讐心はむしろ西洋っぽいと思っていましたもの。 

 そして、なんと言っても一番感銘を受けたのは、後半度々出てくる「犠牲=サクリファイス」と言う言葉について。 龍馬の死を一種の「犠牲」「殉ずること」としながら、それは「暗い死」というものではなく、希望ある「復活」に結びつくものだと書かれているくだり。 第四部のタイトル「RYOMA THE HOPE」が思い起こされます。

 そうすると、まさに龍馬は殉教したキリストにもなぞられるのかと思うと、聖書の一節が頭に浮かんできました。

 ひとつぶの麦もし死なずば

 ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし

 命が一度大地に落ちて死ぬことがなければ、新しい生が生まれることはない。 

 龍馬伝最終回で龍馬の死とともに描かれるであろう、この「復活」の姿

 彼の死後もその魂が他の人々によって受け継がれていくさま・・・そんな最後を、今心を震わせながら待ち望む自分がいます。 

 龍馬の死を考えると暗くなるばかりだった今このときに、ほの明るい光明を見出したような気持ちにさせてくれた、そんな本と出会えて本当にこれ以上ないほど幸せでした。

 ・・・と、後半ちょっと恥ずかしいくらい大げさな重々しい紹介になってしまいましたが、そういうコアな部分も読み込めると言う一方、撮影秘話や筆者と俳優さんとの貴重な交流を覗き見るというライトな読み方も出来るこの本は、本当に多彩な魅力にあふれていて隅から隅までいろいろな楽しみ方ができると思います。 興味を持たれた方は是非々々☆


 あ、最後になりましたが、第4部のイメージカラーについて。 以前自分が予想した「黒」、もしくは黒に近い「群青」というのはビンゴでした☆  死を予感させる重厚な色でありながら、その深みから何かが生まれてくる予感もさせる、そして生命がうずまく暗い海の奔流を思わせる色=群青・・・ホント重く静かでありながら激しく心をざわめかせる深い色ですよね!
nice!(2)  コメント(3) 

nice! 2

コメント 3

さにー

素敵な本の紹介ありがとうございます。この本とノベライズのⅣはまだ買ってないので、懐が許したら買いたいです。娘の模試代とかやりくりをなんとかしなきゃ。ノベライズは最後が怖くて。龍馬伝の人物のデザインは画面から見て、とってもこだわりを感じさせてくれました。
by さにー (2010-11-27 09:16) 

tatchan

*さにーさん*
ご訪問、そしてコメントまでありがとうございます!

本の紹介なんてホント慣れなくて
個人的な思い入れで埋めてしまった文章でお恥ずかしいですが
興味をもっていただいて嬉しいですvv
本当に素晴らしい本なので、さにーさんもぜひ手にとってみてください!

でも、ノベライズの最終巻を買っていらっしゃらなかったというのは
なんとなくわかります。
私も発売されたとき買ったことは買ったのですが
未放映の箇所はどうしても読めませんでしたから。
ノベライズ、本編と比べると違いも結構あって面白いですよね。
私は第三巻の高杉の描写が本編より丁寧で結構好きですvv
また最終回を見終わったら全巻通して読んでみたいです。
by tatchan (2010-11-28 10:36) 

tatchan

*sanaさん*
ご訪問、そしてナイスもありがとうございました!
by tatchan (2010-11-28 10:37) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。