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嵐が丘 [映画]

 また体調その他落ち着かなくて、久々の更新になってしまいました。

 実は、この4月から一念発起して横浜の絵の教室に再び通い始めたんですよ。 ところが、6年のブランクが大きかったのか、ずずーんと疲れが出てしまって、やら肋骨やら、余り普段痛まないところがダメージを受けて、再び整形外科のお世話になり湿布を貼ったり色々大変でした。 まあ、骨に異常がなかったのは不幸中の幸いでしたが、あの程度の事でこんなに落ち込むなんて、やっぱり年齢のせいもあるかもなぁなんて、本当、歳はとりたくないものとつくづく思いました^^;

 さて、少し前に見た映画『嵐が丘』ですが、これがなかなかよかったので折角なので記念に少し絵を描いて感想を添えてみました。

 1993年製作(?)この映画、存在は公開当時から知っていたのですが、ずっと見ていなかったのですよ。 キャサリンジュリエット・ビノシュというのは聞いていて、ビノシュのは結構好きな女優さんだったのですが、『嵐が丘』に何故フランス人?と当時はちょっと引いてしまったんですね。

Catherine_B_color2.jpg

 
 原作を読んで興味がわいてきた今見てみると、ビノシュのキャサリンは自由奔放で我儘で、気が強いかと思うともろく繊細な面もあり、欠点だらけなのに人をひきつけずにはいられない生き生きとした魅力にあふれていて素敵でした。 ビノシュは笑うと少女のように可愛く親しみやすい感じがするのに、時に女神のような近寄りがたさも感じさせて、独特の魅力を持っているんですよね。 幽霊となってまでヒースクリフの心に生き続ける「永遠の女性」キャサリン役はまさにうってつけだったと思います。 前半のクライマックス「ヒースクリフは私なの」と言う彼女の身を切られるほど激しい愛の表現も切なくて胸が詰まりました。

 荒野でキャサリンとヒースクリフが身を寄せ合って一本の木と心を通わせる場面も霊的で、彼らがいかに魂の根源で結びついているかを感じさせて心が震えました。 ここは本当この映画の肝とも言えますが、キャサリンの神秘的な黒い目とヒースクリフのかなしいまでに澄んだ青い目が、嵐が丘の空と大地を思わせて、その美しさも心に残っています。

Heathcliff_color3.jpg

 レイフ・ファインズヒースクリフは本当ビノシュに負けないほど存在感があって素晴らしかったです。 先日入手したパンフレットにはラルフ・ファインズと書かれていて、映画俳優としてはまだ駆け出しの頃だったのですね。 野生的な風貌にキラキラ輝く目が澄み切っていて、孤児として拾われてきた孤独とキャサリンにたいする愛の純粋さが痛いほど感じらました。 彼は、周りの人々に「悪魔」と呼ばれて蔑まれていましたが、異世界から来た魔王の落胤のように不可思議な存在だけど高貴な雰囲気も漂っているところも原作のイメージそのままだったと思います。  

Heathcliff_B_color2.jpg

 物語の最後、復讐鬼のようだった彼も、キャサリンの墓を掘り起こして生前と変わらぬ姿を目にしてから、この世ならぬものに囚われるようになり、キャサリンの娘と義理の息子のヘアトンとの間に芽生えた愛も素直に受け入れるように変わっていきます。 キャサリンの霊に導かれて迎えた死も、傍目には悲惨に見えても、なんと静かで幸福そうだったことか・・・ラストも原作そのまま深い感動が味わえました。 

Catherine&Heathcliff_color2.jpg

 「馬鹿ね。私は必ずここに帰ってくるわ」

 物語半ばで、不安そうなヒースクリフにかけられたキャサリンのこの慰めの言葉を思い出すと、彼女はその言葉どおり、死んでしまった後も彼の元に帰ってきたんだと思うと切なさに胸が詰まります。

 
 
EmilyBronte.jpg 

 それにしても、二代にもわたる長い大河的な物語を、ややコンパクトではありますが、よく2時間弱に上手くまとめていたと思います。 視覚的にも、物語の象徴でもあるアーンショウ家の館もセットだそうですが、そうとは思えないほど堅固で雰囲気が出ているところも感心しました。 それに風景も荒々しく壮大かつ素朴で美しく、まるでヨークシャーの大地の息吹が聞こえてくるかのようでした。 『嵐が丘』は、まさにこの自然が生んだ物語なんですね。

 そしてもうひとつ、この映画の素晴らしいところは、何と言っても坂本龍一の音楽ですね。 笛の音を基調とした哀愁を帯びた音色は物語の雰囲気と見事にマッチしていました。 

 最後に隠された見所としては、冒頭と最後に登場する、この物語の語り部でもあるエミリー・ブロンテが、アイルランドの有名な歌手シンニード・オコナーが演じているところでしょう。 打ち捨てられ廃墟と化した館を真っ青なマントを羽織って訪ねるエミリーのたたずまいの美しさ、そして、その深い声の響きは本当『嵐が丘』の魂そのもののようでした。


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コメント 5

sana

この「嵐が丘」なかなか良さそうですね~!
熱気が伝わってくるようなイラストですね。
どうしてこんなに雰囲気が出せるんでしょう~。
ファインズの目が特にステキです。

ジュリエット・ビノシュは運命の女性らしい存在感があると思います。
キャシーの役は、絶世の美人というのじゃないんだけど、この人でなくてはと思わせる何か強烈なものがないとね。
ファインズは上手いし~ふけてからの役作りなども面白そう。
エミリー・ブロンテでこんな美女が登場してるんですか!
それもいいですね~。

映画化はいくつもありますが、正直なところ一長一短で、決定版がないような気がしてます。
読んだ後の脳内イメージに勝るものがないというか。
(ちょっとネットで検索したら、この作品には魅力が感じられないという意見があってビックリ、まあ確かに登場人物が欠点だらけの暗い話という見方もありえなくはないと苦笑)

若い頃のティモシー・ダルトンがヒースクリフをやったのはイメージに合ってましたが、ちょっとキャサリンが弱いというか魅力が‥
メキシコ版もあったし‥激情の物語としてはわからないこともないんだけど、なんとなく~変な気分だったり?

絵の勉強を再開されたんですか!
うらやましいです~。 久しぶりだと、ならすのに、日時がかかるのかしらね。ご自分のペースを見つけられますように。
私もいつかそうできたら‥ブランク何年だろう~10年以上?^^;
by sana (2013-04-19 22:51) 

tatchan

*sanaさん*
こんにちは♪
ナイス、そしてコメントもありがとうございます^^

イラスト見ていただきありがとうございます!
この映画はとにかく役者さんの熱演が心に残る作品でしたから
少しでも熱気が伝わったのならよかった~と思います^^

>キャシーの役は、絶世の美人というのじゃないんだけど、この人でなくてはと思わせる何か強烈なものがないとね。

なるほど、そう考えると、ビノシュのキャシーはやっぱりぴったりですよね☆
でも、オリビエの『嵐が丘』では、マール・オベロンという
当時の大女優がキャシー役だったそうですが
オリビエは本当は奥さんのヴィヴィアン・リーに演じて欲しかったとか。
もし実現したら、情熱的かつ絶世の美人のキャシーになっていたでしょうね。

ティモシー・ダルトン主演のも評判がいいですよね~
ただ見たいと思っても、DVD化されていないんですよ~残念です。
あ、メキシコ版もありましたね!監督はブニュエルでしたっけ?
これは確かにちょっと、ですよね~^^;
ヨークシャーのあの風土があってこその『嵐が丘』と思うので
南の国は合わないかな~笑

そうそう、日本でも松田優作主演の『嵐が丘』もあるんですよね☆
ヒースクリフが「鬼丸」とかになっているそうですが(笑)
ちょうど来月有料チャンネルで放映するところがあって
どうしようか迷っています^^;
これがなかなかシュールで別の意味で見る価値がありそうなので(笑)

絵は久しぶりなので、やっぱり慣れるには時間がかかりそうです。
でもモデルさんがいて描くのはやっぱり楽しいので
しばらくは様子を見ながらお財布とも相談して続けようと思っています。
sanaさんも習っていらっしゃったんですか?
絵見てみたいです~機会があったらぜひぜひ☆
by tatchan (2013-04-24 11:00) 

tatchan

*sosianrayさん*
こんにちは♪
ご訪問、そしてナイスもありがとうございます^^
by tatchan (2013-04-24 11:02) 

aya_rui

映像化された後の心理描写や、演出によっては、賛否が分けれそうな
作品に思えましたが、原作の良さを壊すことなく、原作で繰り広げられた世界感の息吹を
しっかりを受け継いだ作品になっていたようですね。

人の思いというのは偉大で、その思いの力は、時に人の創造をも超えた物となって
さまざまな力を見せ付けてくれますが、それが創作という中だけでなく
リアリティーを持って見られると、人が持つ本来の生命力、創造力、愛が
どんなに素晴らしい物かと感じられて、そういう感情に触れられた時の
心の満たされる感覚というのは幸せなものだったりしますよね。

そういう意味では絵画というのも、思いを表現する場として
さまざまな感情を、キャンバスの中に再現することの出来る場でもありますよね。
その分その難しさも大きいと思います。

ブランクがあった分、感覚を取り戻すのも大変かと思いますが
楽しめるように慣れるといいですね、ただご無理はなされないで
お体の負担は、しっかりとケアしてあげてくださいね。
by aya_rui (2013-05-03 18:02) 

tatchan

*aya_ruiさん*
こんにちは♪
ナイスとコメントありがとうございます^^

この『嵐が丘』は、背景や細かい小道具、俳優さんのイメージや演技も
原作の味を損ねることなく感動をつたえているという
珍しいほど満足度が高い映画でした。
・・・と言いつつ、他の『嵐が丘』は全く見ていないので
それらを見るとまた評価が変わるのかもしれませんけどね^^;
また関連の映像を見る機会があったら
感想を書ければと思っています。
よろしければまたお付き合いください^^

絵は物ごころついたときから途切れず自然と続いてきた
唯一の趣味ですので何とか死ぬまで続けていきたいですね。
ただ、加齢ゆえのしんどさだけは何とかしなければというのは確かにあるので
今までのように自然にというわけにはいかないかもしれません。
とにかく、頑張っていきたいですね~^^;

温かいお気遣い本当にありがとうございました^^
by tatchan (2013-05-11 11:04) 

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