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ブロンテ姉妹 [映画]

 今年は花粉の量が特別多いからか、それとも歳のせいなんでしょうかね~例年と同じ薬を飲んでいてもだるかったり眠かったりが何時も以上に酷くて・・・(涙) その上、PCの具合までおかしくなって、気がつくと随分ご無沙汰していました。

 おかげさまで、最近薬を就寝前1錠に減らすなど工夫して、ようやく症状がマシになってきました。 これからはもう、昼過ぎにドラマの録画や映画を見ても途中でグーグー寝てしまうことはないでしょう(笑) PCのほうも、とにかくメカに弱いので相方に頼って、先週末正常な状態に戻りホッと一息ついたところです。

 さて前置きはこれくらいにして、少し前の話になりますが、『王妃マルゴ』以来アジャーニ熱が高まって『アデルの恋の物語』を始めとしていくつか映画を見ていました。 この『ブロンテ姉妹』も、去年偶然イマジカで放映した映画を録りためていたをこの機会にと見てみました。

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 『ブロンテ姉妹』と言いながら、フランス映画なんですよね~この映画。

 登場人物たちが皆フランス語を話すというところは少し違和感でしたが、姉妹の故郷、イングランド北部ハワースの荒涼とした風景を背景として、彼女らの生涯と日常を淡々と描いているところは雰囲気がよく出ていてなかなか味わい深い映画でした。 そう、淡々として静かな展開なだけにかえって彼女らの創作の源である情念のようなものがじわじわ感じられたんです。 

 お目当てのアジャーニエミリー役でした。 病弱で他の姉妹以上に田舎の家に閉じこもりがちで、でも、内に激しい情熱を秘めていて、男装して荒野を歩き回る姿は、まさに『嵐が丘』のヒースクリフかキャサリンかと言う感じ。 アジャーニは『アデルの恋の物語』のときも男装シーンがありましたからね。 強い目線など本来中性的な特徴をもっているので本当適役と思いました。

 花を摘むエミリーに「花は嫌い。すぐに枯れるから」「でもヒイラギは好き。永遠の友情の証よ」と妹の髪にヒイラギの葉を飾るところが印象に残っています。 それから、父パトリックに銃の手ほどきをされるところも一瞬ですが、強く心に残りました。

 
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 長女のシャーロットマリー・フランス・ピジェ。 古典的な雰囲気のフランス美人と思ったら、経歴を調べてみて『ココ・シャネル』の女優さんとわかり懐かしさに浸りました。 実はこの映画、シャネルの恋人役のルトガー・ハウアー目当てで昔映画館まで見に行ったんですよ。 話の筋はすっかり忘れましたが、ルトさんのお茶目さとシャネルの美しさは記憶に残っていました。

 シャーロットは、留学したベルギーの学校の教授に報われない片想いをして胸を焦がすシーンがあって、なるほどこの体験が『ジェーンエア』に生かされたんだな~と思ったりしました。 シャーロットは、次々と病死していった兄弟の中では、一番長く生きていたので(と言っても彼女も最初の妊娠時に産褥熱で若死にしていますが)、物語全体はほとんど彼女の視点で描かれていました。 しっとり落ち着いた大人の雰囲気の彼女がベースというところもまたよかったと思います。

 
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 そして末っ子のアンイザベル・ユペール。 『ボヴァリー夫人』『8人の女たち』の彼女もこの映画公開の頃は若かったんですね~ 彼女もラファエロ前派の絵に出てきそうな雰囲気がある顔立ちで素敵でした。


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 ブロンテ家のただひとりの男子だったブランウェルは『王妃マルゴ』でマルゴの下の兄のアンリ役だったパルカル・グレゴリーが演じていて、『マルゴ』では鼻持ちならない傲慢な貴公子だったのがひ弱な文学青年にガラッとイメチェンしていたのには驚きました。 

 このブランウェルと年上のロビンソン夫人との身分違いの恋愛は、静かで余り起伏のない物語のなかで一番ドラマチックな出来事でした。

 彼は、夫人との恋に破れたショックから、酒とアヘンに溺れる自堕落な日々をおくるようになり、芸術家としての才能を枯らしてついには死に至ります。 その悲劇は、ブランウェル作の有名な三姉妹の肖像画によくあらわれていて、映画の冒頭、晴れ晴れしく披露された四人兄弟の絵姿が、後半に、ブランウェルの部分だけ彼自身の手で消されてしまいました。 才能あふれる姉妹たちの間でただひとり芸術家として実りがなかったブランウェル・・・その悲劇的存在が姉妹たちにあたえた精神的影響はさぞ大きかったことだろうと感じさせました。

 この映画を見てから、ブロンテ姉妹の作品が無性に読みたくなって、まずは『ジェーン・エア』から読み始めて、今は『嵐が丘』の後半に入ったところです。 いや、実を言うと恥ずかしながら、これらの名作は断片的に知っているだけで、きちんと読むのはほとんど初めてなんですよ~^^; おい、ホントに英文科出身?と思いますが、それだけに、余計に素晴らしい~と浸りきっています。

 それから、去年公開された映画の『ジェーン・エア』も見ました。 こちらはマイケル・ファスペンダーミア・ワシコウスカという最近大好きな俳優さんが出演していたからと言うのもありますが、とても素敵な映画だったので、近々感想を是非描きたいと思っています。 何だか遅れてきた文学少女~と言う感じですが(笑)、よろしかったら、またお付き合いください^^


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王妃マルゴ [映画]

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 実はこの映画、公開当時(1994年)既に見ていましたが、つい最近、萩尾望都『王妃マルゴ』を読んでから無性に気になって、再度鑑賞してみました。

 いや~、こんなに素晴らしかったっけ!?と思うほど、情念渦巻く壮麗な歴史絵巻にクラクラするほど圧倒されました! 

 物語は16世紀フランス、ヴァロア王朝の支配下、旧教徒カトリックと清教徒ユグノーの争いが激化していた時代。 時の国王シャルル9世の妹マルグリット・ド・ヴァロアことマルゴは二つの勢力を和解させるために、ユグノー派のまた従兄弟ナヴァール公アンリと政略結婚することになります。

 とにかく、冒頭の大聖堂の婚礼式にしても、王と貴族たちのイノシシ狩りにしても、場面場面がバロック絵画のように力強く躍動感あふれ、また打楽器や笛の音が印象に残るエキゾチックな音楽もクセになりそうなほど素晴らしかったです~! 監督のパトリス・シェローは、舞台監督として有名な人だそうで、だから劇的な空間作りがこんなに巧みなんですね。

 印象に残る場面は多々あるなか、一番衝撃的だったのは、前半のクライマックスと言うべき、凄惨を極める聖ヴァーソロミューの大虐殺でした。 宗派の違いというだけで、まるで動物を屠殺するように人間が同じ人間をいとも簡単殺すという恐ろしさ・・・! この容赦ない残酷描写は絶対映画史上に残る名場面と思います。 殺された人々の累々たる死体の山は、まるで悪夢のように脳裏に焼きついて決して離れません。 

 それにしても、ヒロイン、マルゴ役のイザベル・アジャーニの美しいこと! 夜の闇のような漆黒の髪、アラバスターの肌、宝石のような青灰色の瞳・・・まさに「ヴァロアの真珠」とうたわれたマルゴそのものでした。 そのうったえかけるような美しい目で見つめられると、同じ女の身でも思わずグラッときてしまいます。 アジャーニはその昔、『アデルの恋の物語』を見て以来夢中になった女優さんでしたが、今回あたらめてそのファムファタル的美しさに魅せられました。

 一見淫蕩で不道徳な女性に見えながら、その実優しく温かい心を持っていたマルゴ。  ドロドロと退廃的な一族のなかにあって、唯一生き生きとした人間的な魅力にあふれていました。 ユグノーの貴族ラ・モールとの恋は絵に描いたような美男美女の外見もさることながら、孤独な魂が半身を求めて惹かれあう切なさにうっとり陶酔しました。

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 ラ・モールの「もし僕が死んだら、貴女はこの首を大切にもっていてくださいますか?」というセリフは本当ぐっと来ます~>< 実際、その不吉な言葉通りに、彼は王族の陰謀に巻き込まれ無実の罪で処刑され、涙ながらにマルゴが彼の首を抱えることになるんですよね~ああ、何たる壮絶なFatal Love

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 アジャーニの熱演以上に印象に残ったのは、シャルル9世、マルゴの兄です。 ジャン・ユーグ・アングラートは細面の端正な顔で、幼児性丸出しの行動をとったかと思うと、本来の高貴な王の顔に戻ったり、怪物のような母カトリーヌ・ド・メディシスの精神的支配に苦しむ、心の均衡を失った病的な王様を生々しく熱演していました。

 彼は、妹マルゴに寄せる近親相姦的な偏愛と、命の恩人である妹の夫、ナヴァール公との友情との間で揺れる心が切なくて、結局は、実の母の陰謀が巡り巡って彼を殺し、血の汗を流しながら非業の死を遂げるという最期はとにかく哀れで涙が出ました。 

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 そして、その諸悪の根源とでも言うべき ほとんど魔女か妖怪かという面構えの母カトリーヌ・ド・メディシス、背筋が凍るほど迫力満点でした!  ヴィルナ・リージはこの役でカンヌ映画祭助演女優賞を獲得したと言うことですが、夫の喪に服した黒いドレスの上に蒼白い顔をのぞかせる様はまるでルーブル宮にさまよう幽霊のようで、ヴァロアの血筋に執着する怨念の母を見事に演じきっていました。

 
 しかし、カトリーヌと言えば、あのフィレンツェの名家メディチ家の出なのですよね☆ メディチといえば銀行家で知られていますが、元々は丸薬を扱う薬屋でした。 そして、薬と言えば、毒薬も!というわけで、ボルジア家~ではないですが、この映画では、彼女の最大の武器、毒薬が大活躍していました。 わ~もう~恐ろしいっ!

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 そして、カトリーヌの最愛の息子、次男のアンジュー公、後のフランス王アンリ3世は、兄弟のなかでは武勇の誉れも高く一番の美男と言うことですが・・・冷酷で傲慢不遜で母親としょっちゅう抱き合ったりキスしたり、ベタベタしているところは、ここも近親相姦?と思えるほど気持ちが悪かったです。 

 しかし、↑右のギース公(マルゴの元愛人)といい、絵には描きませんでしたが、マルゴの弟アランソン公もともに美男で、ユグノー側も、マルゴの夫、ナヴァール公アンリはさすがにいい男と言えませんが、彼の従者や同士も美男ぞろいで、マルゴの周りはイケメンだらけ言うところもよかったです~笑

 それにしても、最後、兄のシャルル9世が崩御した悲しみの涙も乾かぬ間に、戦地から颯爽と帰還したアンジュー公に向けて「新国王アンリ3世万歳!」という祝福の声が響き渡る瞬間の無常感! いつの世でも、権力の移り変わりはかくも冷酷に描かれるものとため息が出ました。


 このところ、15世紀イタリア~16世紀イギリス~とルネッサンスづいていましたが、フランスルネッサンスは盲点でしたね~ ルネッサンスは、人間の目を背けたくなるような本能的な獣性と理性と知性を重んじるヒューマニズムのせめぎあいが本当ドラマチックで面白いです☆

 と言うことで、また関連本も色々読んでいます。
 
王妃マルゴ

王妃マルゴ

  • 作者: アレクサンドル デュマ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/12
  • メディア: 単行本


 抄訳ですが、あの『三銃士』で知られるデュマ作の映画の原作本です。 まだほんの冒頭しか読んでいませんが、補足として本文の間に挟みこまれる訳者の鹿島さんのコラムが面白くて、当時の歴史や風俗を知る雑学として読むことも出来ます。

 しかし、さすがにマルゴとラ・モールの出会いとかは宮殿の中で割合普通ですね~映画では、マルゴが仮面をつけて夜の街を男漁りに出かけたときに出会ってイキナリ深い仲になっていましたけど^^;

 そして、きっかけとなったこのマンガももちろん面白かったです~☆

王妃マルゴ 1 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ 1 (愛蔵版コミックス)

  • 作者: 萩尾 望都
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: コミック


 萩尾さんにしては絵がシンプルなところは少し物足りない気はしますが、慣れてくると、当時の風俗がトランプの絵のようで、おとぎ話を読むように楽しくなってきます。 6歳から描かれた少女時代のマルゴは明るく生き生きしていて、ちょっと初期の萩尾さんのマンガを思い出しますね。 池田理代子さんとの対談で、今まで避けてきた「性」を描きたいと対談で言われていましたが、その点ではこれからが楽しみ♪ 思春期を迎えたマルゴが早く見てみたいです☆

追記: イザベル・アジャーニのイラストをトップに追加しました。 彼女は、とにかく描くのが難しくて・・・思い入れがあるだけに四苦八苦しました~>< (2/12 PM:16:30)


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もうひとりのシェイクスピア [映画]

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 去年の秋、近々シェイクスピアの映画をやるらしいという情報を得てから、ずっと公開を楽しみにしていたこの映画。 ようやく年の暮れに見に行ってきました☆

 これは、現在シェイクスピア作とされる偉大なる戯曲の数々が、実はシェイクスピア自身が書いたものではないという、「シェイクスピア別人説」を真っ向から描いた、いわば異端の物語。

 シェイクスピア作品には思い入れがあるだけに、ヘタに描くと眉唾~となって話に入り込めないこともあるかと少し危惧していたのですが・・・冒頭、あの名優のデレク・ジャコビ(なんと彼も別人説支持者だそうです☆)が案内役となり誘うのは重厚かつ華麗な世界、気がつくと、実際17世紀のロンドンに足を踏み入れたかのようにそこにどっぷり浸かっていました☆

 主人公は、別人説のなかでも最有力候補と言われる、オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィア。 数奇な運命の下に生まれ才能あふれる悲劇的人物としてドラマチックに魅力的に描かれていました。 エリザベス女王との禁断の恋や、養父セシル卿との確執など、波乱に富んだ彼の人生はまるでシェイクスピアの戯曲そのもの。 死の床についた最後の場面など、高貴で不遇な天才の末路に思わず涙がこぼれました。 

 リス・エヴァンズの繊細な演技と貴族的な雰囲気が素晴らしくマッチしていましたね。 彼は『アメイジング・スパイダーマン』などの悪役で知られた俳優さんだそうで、自分は悪役向きな人には惹かれるので、他の出演作もぜひ見てみたいと思いました。

 また脇を固めたキャラクターもどれも粒ぞろいの個性豊かな人物ばかり☆

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 エドワードに「太陽」と称されるエリザベス女王は、ヴァネッサ・レッドグレイヴ。 一国の元首として女神のような神々しさと恋多き芝居にも夢中になるひとりの女性としての無邪気さを兼ね備えた彼女を、ベテラン大女優が存在感たっぷりに演じていました。 お歳を召していても本当に美しい方ですねvv ヴァネッサ・レッドグレイヴといえば、ミュージカルの『キャメロット』ミケランジェロ・アントニオーニ『欲望』など有名な映画がたくさんあるのに、恥ずかしながら最近作しか見ていくて・・・でも『つぐない』のヒロインの晩年役の複雑な内面性をあらわした深い演技は強く印象に残っています。

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 感心したのは、若き日のエリザベス(イラスト右)。 なかなか似ている女優さんを見つけてきたものだと思ったら、ジョエリー・リチャードソンは、姓は違うけどヴァネッサ・レッドグレイヴの実の娘さんなんですね! いや~知らなかった☆ 道理で、目元とか鼻筋とかソックリで、全然違和感がありませんでした。 彼女も『ドラゴンタトゥーの女』でアンナというキーパソン的女性を演じていたのが記憶に新しいです。

 それから、セシル卿(イラスト左)、狡猾さが出ていて悪役としてなかなか見ごたえがありましたが、ここでもびっくりすることが☆ セシル役のデヴィッド・シューリスって、ハリポタルーピン先生をやられていた方ですか!? まだほんの中年なのに、老人役が上手すぎです! 私は、てっきりこの方も女王様と同様、往年の名優がやられているのかと勘違いしていました^^;

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 リチャード3世のモデルとして描かれていた息子のロバート・セシル卿も個性的で面白いキャラクターでしたね~ 強烈な目線、不気味に曲がった背と異様に甲高い声、エドワード・ホッグは聞かない名前と思ったらイギリスの舞台中心の俳優さんなんですね。 エドワードに対する嫉妬も、陰謀を企てる腹黒さも、リチャード3世を思わせて、いやホント絵に描いたように陰鬱な雰囲気がよく出ていました(笑)

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 そして、後の桂冠詩人として知られるベン・ジョンソン、この映画では、エドワードが最初に戯曲を与えて偽りの作者になれと命じた若き戯作家でした。 彼は、大学出で教養も才能もありながら、エドワードの書く戯曲の前では色あせて、芸術家として認められず苦悩する切なさと、それでもエドワードの才能は誰よりも理解し畏敬の念をいだいている、その複雑な心境が少し『アマデウス』を彷彿とさせました。 セバスチャン・アルメストロは、日本で言うと榎木孝明を思わせるしっかりとした骨格の俳優さんですが、なかなかの熱演で引き込まれました。 彼はエドワードの影というか、もうひとりの主人公とも言えますね。

 
 こうした魅力的な俳優陣に加えて素晴らしかったのは、なんと言ってもエリザベス朝時代のロンドンの町並みや風景が見事に再現されていたということです☆ それから、まるでエリザベス朝絵画から抜け出てきたかのような華麗な貴族のコスチューム、素材感あふれる民衆の衣装の数々も本当に素敵でした! これらの見事な視覚効果によって、民衆が熱狂する演劇の場面、グローブ座のスペクタクルな内部、 優雅で幻想的な宮廷劇、当時の時代の息吹が生き生きと再現されていました。 

 監督のローランド・エメリッヒ『デイ・アフタ・トゥマロー』、『インデペンデンス・デイ』など、主にパニック映画を得意としてきたそうで、今回の歴史劇は意外な感じがしましたが、 パニック映画での特殊撮影技術の経験が生かされたと考えると、なるほど~と納得がいきました。 相方は、「受けのいいパニック映画で資金を稼いで、本当に撮りたい映画をつくっているんじゃないの?」と言っていましたが、ちょっとそんなところもあるのかもしれませんね(笑) 

 「私は人間の心をずっと書いてきたからわかる。 君は私を裏切っても、決して私の作品は裏切らない」

 ラストシーンで、死の床に就いたエドワードが見舞いに訪れたベン・ジョンソンに自らの作品を託して語った彼の最後のセリフが泣かせました。

 大胆に別人説を描きながら、全編シェイクスピアの戯曲を生き生きとちりばめてその魅力を存分に伝えていたこの映画・・・ 本当に、シェイクスピア作品に対する限りない愛と敬意にあふれた素晴らしい物語(フィクション)だったと思います。  

 さて、実は、「シェイクスピア別人説」についてほとんど予備知識がないまま鑑賞しまったので、映画を見終わった後、少しでも別人説について知りたくて、早速本を読んでみました。

 
謎ときシェイクスピア (新潮選書)

謎ときシェイクスピア (新潮選書)

  • 作者: 河合 祥一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本



 映画パンフレットにコメントを書かれていた河合祥一郎先生の著作です。

 この映画のオックスフォード伯を始めとして、クリストファー・マーロウフランシス・ベーコンなどの別人候補の6人を詳細に検証しているだけなく、続く章で「シェイクスピアとは何か?」について語り、17世紀のエリザベス王朝時代の社会や文学事情についても詳しく説き明かしています。 面白いミステリーを読むように先が気になって、ほとんど一気に読み切ってしまいました。 十分な史料と考察に基づいた真面目な学術書でありながら、スリリングでワクワクするこの本、シェイクスピア自身に興味のある方にはぜひお勧めです☆

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映画『くろねこルーシー』&ニャラバン [映画]

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 先週末の日曜日、シネマ109湘南映画『くろねこルーシー』を見て、さらに大ヒット記念ニャラバンにも参加してきました♪ もう、ルーとシーったら、滅茶苦茶可愛かったです~!! 

 あ、大ヒット記念ニャラバンと言うのは、出演俳優さんと監督さんの舞台挨拶、および質疑応答のティーチイン、そして、なんとあの双子の黒猫、ルーとシーによるお見送りまでついてくるという超お得なイベントです☆ ちょっと頑張って前から3列目の席をゲットしていたので、本当かぶりつきで堪能してきました♪ 

 挨拶に来られた俳優さんは、占い師の鴨志田役の塚地武雄さん、その奥さん役の安めぐみさんのお二人。 塚地さんはふっくらしていて愛想がよくて、映画どおりの癒し系の雰囲気たっぷりの楽しい方でした☆ どちらかというとく犬派だったのが、この映画の撮影をきっかけにしてすっかり黒猫にメロメロになられたとのこと。 なるほど~本当に映画の鴨志田お父さんそのものですね~笑 安めぐみさんは、黒猫をイメージした胸元が大胆に見えるセクシーな黒のミニワンピ姿の、見るからに優しそうな小顔の美人さんでした☆ ちょうど映画の撮影に入られる直前に結婚されたそうで、コメントで「新婚ホヤホヤから突然別居生活の妻役で戸惑いました」とおっしゃられていました(笑)

 ティーチインでは、「抱っこ嫌いな猫ちゃんたちが多い中で、ルーとシーはよくあれだけ大人しく抱っこされていますね。何かコツがありますか?」という質問があり、監督さんが「これから抱くんだ~というのをあまり意識しないこと」と答えられていました。 なるほど~確かに観察していると、塚地さんや安めぐみさん、そして監督さんたちの皆さん、身構えることなくごく自然にルーとシーを抱っこされていましたね☆ これも監督さんとトレーナーさんの長年の猫との付き合い&深い経験があったからこそなんだな~とあらためて感心しました。 

 そして、最後のお見送り~☆ まさか猫ちゃんに触われるとまで思っていなかったので、本当に意外なサプライズでした! 順番が回ってきてそっと触ると、毛並みがまるでビロードのようにツヤツヤしていて触り心地抜群~☆ 何て綺麗な猫ちゃんたち!と感激ひとしおでした。 それにしても、見知らぬ人たちに撫でられても動じることなく大人しくしているところは、さすが~タレント猫!と感心☆ でも、こんな機会は二度とないと思い、つい調子に乗って長く撫でてしまい・・・結果、係の人に「後がつかえていますから」と注意されてしまいました~^^; わ~すみません!

 さて後先になりましたが、もちろん映画本編もとっても楽しめました♪

 黒猫が大の苦手という売れない占い師の主人公のもとに、ひょんなことから黒猫の双子の赤ちゃんがころがりこんできて、猫たちを育てるうちに予想もつかないような騒動が次々と起こるお話なのですが、 猫たちを世話をするくだりや周りのどたばたは楽しいし、親猫交えた子猫たちは可愛くてほのぼのするし、そして「家族に責任を持つ」大切さについてもシリアスに描いていて心に染みるし・・・本当、見終わった後心がほっこり温まる癒し効果抜群の映画でした♪

 俳優さんも皆芸達者な方ばかりで、安心して楽しめましたね~ 何より全編、鴨志田お父さんのコミカルなしぐさやセリフが本当に楽しくて笑いっぱなし☆ 前半の駄目男っぷりも板につきすぎでした(笑) それから、ドラマでは出て来なかった映画初登場の俳優さんたちもそれぞれしっくりハマっていい感じでした。 とくに印象に残っているのは、占い仲間のガリンシャさん。 どこかで見た?と思ったら、何と『カーネーション』の安岡美容室の玉枝さん、濱田マリさんでした! アヤシげなインド風の衣装とズケズケとした物言い、コミカルでいい味出していました。 生瀬勝久さんも出られるというので楽しみにしていたのですが、シリアスな役とは意外でした☆ 母猫ルーシーの元飼い主役で、哀愁たっぷりに恵まれない愛猫家を演じておられました。 もし続編が出来るのなら、寂しい彼にもささやかな幸せをと思います。

 本当「きっと大丈夫、と猫たちもそう言っています」というセリフに元気付けられました。 家族や友達をより身近に感じて、もっと大切にしたいという気持ちが自然と湧き上がってきました。 平松愛理さんのテーマ曲「花と太陽」も心温まる優しい曲で、エンドロールに流れたときは、少しじわっときてしまったくらい・・・ また機会があったら何度でも見てみたいと思えるこの映画、とくに猫好きの方には絶対お勧めです(笑)


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マクベス  [映画]

 伊勢谷さんのスペシャルドラマに備えて、WOWWOWに再加入したところ、また映画を見る機会がぐんと増えました。

 最近作から昔の作品までいろいろ見ているのですが、何故か70年代の映画が特に印象に残ることが多く・・・やはり年代的に郷愁を感じるからでしょうか?(笑) せっかくなので、少し感想を残しておくことにしました。

 まずは、ロマン・ポランスキー監督『マクベス』について。

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 綺麗は穢い、穢いはきれい

 何て残酷で陰惨な、でも美しい歴史劇! 荒野の魔女たちの禍々しい異形の様相、王冠のため流されたおびただしい血、また血・・・権力欲にとらわれたマクベスの悪夢のような荒涼とした世界を、壮大なセット、中世風のリアルな質感のコスチューム、存在感のある役者たちを使って、完璧なまでに見事に描ききっていました。 

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 夜よ すべてを隠せ 優しいあわれみを閉じ込めて

 この血みどろの手で 俺の人並みの恐怖をすべて消してくれ

 暗い烏もねぐらに帰る 昼の天使たちがぐっすり眠り 夜の悪魔が目を覚ます時だ


 この映画の一番の特徴は、従来なら壮年として描かれるマクベスとマクベス夫人が若く美しいこと。 それによって、物語の悲劇性がよりいっそう高められていました。

 マクベスにはジョン・フィンチ。 少しジョニー・デップを思わせる美男俳優さんですが、聞かない名前と思って調べたら、ヒッチコックの『フレンジー』、『ナイル殺人事件』等に出演していました。 誘惑に屈しやすいマクベスの陰鬱な心理、終盤の勇猛果敢な戦いぶり、随所に挟み込まれるシェークスピアの原文の詩的なモノローグも格調高く演じていました。

 一方のマクベス夫人役はフランセスカ・アニス、 腰より長く伸びた金糸のような美しい髪と零れ落ちそうな黒い目がクールな美女。 曳きずるほど長い裾のドレスのほっそりとしたシルエットがまた美しく、どこか少女のような無邪気さを残した容貌が、気の触れた姿をいっそう痛々しく見せていました。 彼女はどこかで見たことがあると思ったら、『砂の惑星』のレディ・ジェシカ、ポールのお母さんだったのですね! この大きな美しい目は一度見たら絶対忘れられません。  

 それにしても、場面場面が本当に印象的でよく出来ていました。 背景に暗雲がたちこめる荒涼としたスコットランドの平原。 マクベスの即位式が行われたストーンヘッジの丘の原初的で呪術的な神聖さ。 また陰謀の行われた夜の闇の深さ、あるいは雷鳴とどろく嵐が吹き荒れ、土砂降りの雨が地面をぬかるみと変えて高貴で華麗な衣装や靴をも泥で汚していました。


 明日 明日 またその明日がこれこそと 日ごとに通っていく

 歴史の最後まで 昨日はすべて愚か者の墓場へと道を照らす

 消えろ短いローソク 人はひと時の影 三文役者 舞台の空騒ぎ 終われば消えるだけ

 まるで白痴の独り言 怒鳴りわめくだけで 何の意味もない


 最後、斬られて槍に先に突き刺され、城の頂上に掲げられるマクベスの首のまだ生きているかのような表情が、とにかくグロテスクで、なんとも言えない虚無感がありました。 どこかのブログで、あのグラグラするアングルは、「マクベスの首の視点で撮られた画面」と書かれていましたっけ・・・ 何てポランスキーらしいブラックな映像センス! 最後の最後まで緊迫した劇的演出に、見終わった後は、底なし沼のように深い悪夢からさめたような気分になりました。 本当に濃く充実した二時間余でした。

 ところで、この映画、これだけ傑作なのに、日本国内ではDVDが出ていないんですよ~ インポート版は出ていますけど・・・


Macbeth [DVD] [Import]

Macbeth [DVD] [Import]

  • 出版社/メーカー: Sony Pictures
  • メディア: DVD



 まさに、埋もれた名作とはこのことと思いました。 まあ、それを放映してくれたWOWWOWさんには感謝ですね。 一応問い合わせたところ、再放送は11月7日だそうです。 興味を持たれた方は是非どうぞ! でも、やっぱりDVDが出てほしいですね~近いうちに、国内でも発売されますように・・・

 それにしても、この映画を見て、ポランスキーの作品が無性に見たくなりましたよ! ナスターシャ・キンスキーのただならぬ美貌と映像美が忘れられない『テス』、戦時中のヨーロッパの陰鬱な雰囲気がただよう『戦場のピアニスト』ジョニー・デップ主演の古書をめぐるアヤシゲなミステリー『ナインスゲート』等など、どれも公開当時夢中になって見たものばかり。 それから、まだ見たことのない最近作の『ゴーストライター』も近々WOWWOWで放映されるみたいなので楽しみです♪ お年なのにまだまだ現役で頑張っている監督にエールを送りたいです。


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